川井憲次 氏

VIENNA INSTRUMENTS ARTIST INTERVIEW 04 / Presented by Crypton Future Media, INC.

20年以上に渡り、実写/アニメ映画、ドラマ、ドキュメンタリーなど、ジャンルを超えた様々な映像音楽を中心に活躍を続け、今や世界を股に掛けて活躍する作曲家、川井憲次氏。 映像に奥行と空気感を与え、細やかな心理状況すらも浮き彫りにする印象的なサウンドスケープは、多くの支持を得ている。
2009年12月某日、東京都内の閑静な住宅街に位置する川井氏のプライベートスタジオ -AUBE Studio- にて、次世代型ミックス&ホストツール 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 、そして1鍵あたり1,200サンプルを収録した最上級のグランドピアノ音源 『VIENNA IMPERIAL』 の導入に伴い、お話を伺った。

─スタジオ内で 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 、 『VIENNA IMPERIAL』 の導入を行なったのは、川井氏のメインマシンであるMacPro(MacOSX10.5.8/DAW: Digital Performer 7)。これら2製品の他に、既に導入済みながらも眠っていた『VI SYMPHONIC CUBE』の戦線復帰も目的の一つ。まずは、当初どういったきっかけで数あるオーケストラ音源の中から 『VIENNA INSTRUMENTS』 を選ばれたのかをお話頂いた。

VIENNAが出たばかりの頃から、音がいいと評判だったんです。ただ、実際に導入している人はまだ少なかったんですよ。なので実際の詳しいところはよく分からなかったんですが、音がすごくいいというのをサンレコなどでも読んでいたので気になっていました。

 『SYMPHONIC CUBE』 を手に入れてから今までは、VIENNAを動かす用に(その時点で)考えられる最大のスペックでと注文した別のマシンをもう一台用意していたんですが、やっぱり一台で全部完結する状態がずっと望ましかったんです。

─今回導入する製品の一つである 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 は、64bit完全サポート(MacOSX10.5環境でも64bitサポート!)や、サードパーティ製VST/AUプラグイン(インストゥルメント・プラグイン&エフェクト・プラグイン)のサポート、マルチコアCPUへの最適化、ステレオ幅を調整可能な“PowerPan”をはじめとする強力なミキシング機能、そしてネットワーク環境を利用した分散処理を可能にするなど数々の便利機能を搭載。ソフト音源を多用した音楽制作において快適な環境を提供する次世代型ミックス&ホスト・ツールです。

プラグインとして起動してもシステム内部ではDAWとは別のアプリケーションとして動作するので、64bitOS上ではDAW に関わらず64bit動作が可能な為、コンピュータのパフォーマンスをフルに活用することが可能です。
早速インストールを済ませた後、 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 のチャンネル上で 『VIENNA INSTRUMENTS』 を立ち上げ、動作を試した。

立ち上がりが早い!VIENNAがこんなに軽く動作するなんて。これこそが、そういう風にできないのかなとずっと思っていたことでした。こんなに早いんだったら頻繁に使っていけそうですね、うれしいです。

─複数のVSL製品をお持ちのユーザーが 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 を使用することで魅力を感じるポイントの一つとして、初回起動時の所要時間が大幅に短縮されることが挙げられる。川井氏が 『VIENNA INSTRUMENTS』 を導入していながらもなかなか使用する機会が無かった要因も、これで解消されることになった。

VIENNA ライブラリの音がいいのはもう実感して知っていたので、どうやったらこれが簡単に使えるんだろうな?というのがずっとありました。そういう意味では今回の 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 はバッチリですね。うちのスタッフはみんな知ってますが、僕は気が短いからすぐ簡単なシステムを求めてしまうんです(笑)。

まぁ、今思ったことをすぐにやりたいっていう人がほとんどだと思うので、作曲家で気の長い人っていないんじゃないかな?とも思います。面倒だと思った時点で、もうその製品は使いたくなくなってしまう方も多いんじゃないでしょうか。

あと、僕はもう老眼なので小さい文字が見えないっていう加齢による問題点があるんですが(笑)。音楽用ソフトもそうなんですけど、表示が細かくて小さいんですよね。なのでディスプレイを大きくしたりするしかないんですけど、その点VIENNAのインターフェースはすっきりしていて見やすいですよね。やっぱり立ち上がりの早さだとか、操作性の良さというのは凄く大事だと思います。もしかすると音のクオリティよりも重要かもしれない。

─川井氏の楽曲の中では、重量感溢れる迫力のストリングスがその魅力の一つともいえる程の存在。 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 の導入により、今後 『SOLO STRINGS』  『ORCHESTRAL STRINGS』 などを活用されるシーンについて伺った。

自分の制作スタイルとして、ストリングスに関しては今までほとんど100%外で録ってきているのが現状で、ソフトシンセを足すとしてもコンバスが少し足りないだとか、サポート的な使い方しかしていなかったんですよ。

ところが、運指の問題などで生では難しいフレーズなんかもあって、実際に曲を書いている中で、これは弾きづらいから直そうといった消極的なアレンジなんかもあったりするんです。

やってできないことはないと思うんですけど、時間の限られた中で何曲も録らなければいけない時に、現場ではあんまり無茶なことはできない。なので、これからはVIENNAを使ってそういったフレーズにもトライ出来るのかなと思います。

─コンポーザーそれぞれにとって異なる、最適な制作環境の条件。複数のコンピュータを用いて処理能力を最大限に引き出す環境の構築から、オールインワンのシンプルさを求める環境まで 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 は様々な制作スタイルをサポートし、そのパフォーマンスを発揮します。
続いて、至上最大のピアノ音源 『VIENNA IMPERIAL』 。Bosendorfer Imperial 290-755をCEUSという自動演奏技術によって緻密にサンプリングし、Bosendorferらしい煌びやかな中高域を漏らすことなく収録。総容量 500GBのライブラリ(VSL 社の圧縮技術により、50GBまで圧縮)は、1鍵につき1,200サンプルと最大100段階のベロシティレイヤーを備える。位相の問題を引き起こすことなく、ステレオ幅を自由自在にコントロールすることが可能なため、ソロ~アンサンブルまで明確な音像を確保することができる正に“皇帝 (IMPERIAL)”の名に恥じないピアノ音源です。
川井氏の楽曲の中で重要なファクターの一つであるピアノ。ピアノを用いた楽曲を制作するにあたり、近年のスタジオ事情がネックとなっているという。

都内のスタジオでいいピアノを探そうとすると大変なんですよ。自分の大好きなピアノがあったスタジオが閉鎖してしまったんですが、そこのBosendorferが一番好きだったんです。他には、ほんとに数えるくらいしかありません。

多くのポップス系主体のスタジオだと、なんだこれ?というピアノが結構あって・・・。最近スタジオがどんどん閉鎖になってきているから、いいピアノが設置されているスタジオが混み合っていて予約が取りにくいんです。

スタジオが取れないと、レコーディングのスケジュール自体がうんと狂ってきちゃうので、そういうのもあってピアノに関しては、いい音源があったらいいなと思っていたところでした。

─インストール終了後、 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 上で 『VIENNA IMPERIAL』 を起動する。MIDI接続された往年の名機Roland MK-80の鍵盤を叩き、川井氏はその声を一つ一つ確かめるように何度も鍵盤を叩いた。

あぁ、いい音ですね。

─数あるピアノ・ブランドの中でも、特にBosendorferが好きだと川井氏は語る。

元々Bosendorferの音色が好みだったので、外へ出ずにこれだけの音が使えるというのは単純に楽しみです。スケジュールの面でも大変助かります。特に、この響きを活かして静かめの曲で聴かせてみたいと思います。

─これまでにもソフトウェア音源を使用してピアノを収録することがあったという川井氏。ここだけの裏話を明かしてくれた。

ピアノに関しては今までもソフトシンセで録ることがあったんですよ。ただ、アンサンブルの中に混ぜちゃうときは、大容量の音源よりもサンプルが8MBのピアノ音源を使ったりもしていました。おそらくベロシティ・レイヤーなんかもないでしょうけど、音の力強さだったりグロス感が使えたんですよ。まぁ、流石にそれを裸で鳴らすのはちょっと抵抗ありましたけど・・・なんてったって8MBですから(笑)。でも、 『VIENNA IMPERIAL』 は本当に素敵な音が鳴るので、早速色々使ってみたいと思います。

─2010年5月、 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 、 『VIENNA IMPERIAL』 がAUBE Studioに導入されて以来、半年弱に渡って使用してきた感想を川井氏に尋ねた。

─お気に入り頂いた点はございましたか?

『VIENNA INSTRUMENTS』 、 『VIENNA IMPERIAL』 ともにクオリティは圧倒的に高いと思います。仕事柄、色々な音源を試すのですが、中でも群を抜いて良いですね。

よくある話ですが、音源を単体で聴くととても良いのに、オケに混ぜるといまいち、みたいなことがあります。それは、埋もれすぎてしまうとか、出っ張りすぎてしまうといった、まあ簡単に言えば使いにくい音源のことですが。一連のVIENNA製品にはそれがなく、すっとオケに馴染んでくれるのが嬉しいですね。

今までも『VI SYMPHONIC CUBE』は使っていたのですが、 『VIENNA ENSEMBLE PRO』 を導入する事で、より使いやすくなったと思います。

─導入前後で変わったことは?

特に 『VIENNA IMPERIAL』 を導入してから、ピアノが録音できるスタジオを探さなくて済むようになりました。思い余って、Bosendorferを買ってスタジオを作ろうかとも考えていたくらいなんですけど、本当に助かります。

─どのような用途でお使いいただいていますか?

私は劇伴屋なので、映画やTVのサウンドトラックに使っています。「エデン(「東のエデン 劇場版II Paradise Lost」)」後半のピアノ・パートや香港映画の「葉問2」(日本未公開)などで 『VIENNA IMPERIAL』 を使用しました。

ストリングス等も、オーケストラのシミュレーションとして使うことはなく、そのまま本チャンで使うときだけ使用しています。もともと生楽器の高品位サンプルなワケですから、他に生楽器を入れても相性はまったく問題ありません。というか、生楽器を混ぜることで、よりリアルに聞こえてくるから不思議です。

サウンドの処理に関しては、私は一切いじらず、全てエンジニアの方にお任せしています。曲やアレンジによって、EQのポイントやリヴァーブ感等が異なるからですが、自分でエディットするとワケがわかんなくなっちゃって、結局デフォルトのままが一番良かった、なんてことも多いからです。

生のストリングスを録音しているとき、このピアノは川井さんが弾いているのですか?と、弦の方に驚いたように尋ねられました。実は自分で 『VIENNA IMPERIAL』 を弾いたあとバリバリにエディットしていたので、上手いのはあたりまえなんですけどね・・・。プロの耳でもシンセとは分からなかったみたいでした(笑)

川井憲次 氏

東海大学原子力工学科を中退後、在籍していたバンドがコンテストで優勝するのを期に、ギタリストとして活躍。その頃から自宅録音に興味を覚え、舞台やCM音楽などを手がける。

作品『紅い眼鏡』の音楽を担当し、劇伴作曲家としての活動をスタート。以降、アニメ/実写、国内外を問わず多数の劇伴音楽を世に送り出す。2007年には、パシフィコ横浜 国立大ホールにて単独コンサート ~Cinema Symphony~ を成功させる。作品と寄り添うように広がる独特の音世界は多くのフォロワーを産み、高い評価を得ている。最新作は、『CHATROOM(英)』、『鉄の骨』など。

2005年、AMD Award Digital Contents of the year「Best Music Composer賞」受賞(『イノセンス』)

2008年、第41回シッチェス・カタロニア国際映画祭「最優秀映画音楽賞」受賞(『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』)。

代表作:『紅い眼鏡』『機動警察パトレイバー』『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』『アヴァロンAvalon』『らんま1/2』『ひぐらしのなく頃に』『機動戦士ガンダム00』『Fate/stay night』『めざめの方舟』『精霊の守り人』『東のエデン』『DEATH NOTE』『ウルトラマンネクサス』『科捜研の女』『リング』『おろち』『仄暗い水の底から』『南極日誌』『墨攻』『セブンソード』『葉門』他多数。

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