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作曲家/編曲家の侘美秀俊(タクミヒデトシ) 氏より、楽譜作成ソフト専用のオーケストラ総合音源「NOTE PERFORMER 3」のレビューを頂きました!

2018年7月9日 13:00 by T

作曲~編曲だけでなく、多数の書籍の執筆から教鞭まで幅広く活躍中の作曲家/編曲家、侘美秀俊(タクミヒデトシ) 氏より、楽譜作成ソフト専用のオーケストラ総合音源「NOTE PERFORMER 3」のレビューを頂きました!


スコアと同時に、デモ音源、つまりプレイバック音源の提出が、あたりまえに求められるようになったのは、何年前くらいだろう。面倒なスコアリーディングすることなく、手っ取り早くイメージできることから、たいそう有用だということなのだろう。一方で、耳からインプットされたイメージが、比較的早く固定化されてしまうので、実演の自由な演奏表現に制限がかかることもある。まさに、デモ音源、一長一短であるが、ここではその議論には踏み込まないこととする。

さて、本題

オーケストラ音源と呼ばれるものに、ハイクオリティーで、ハイスペックで、ハイブローな音源は各種ある。MIDIベースで仕上げなければいけないシチュエーションでは、時間と予算さえあれば、勝手にとことんリアルを追求しても良い。一方で、のちに実演される楽譜を作っている我々にとって、スコアに対するデモ音源に求めるものとしては、はっきりいって、そんなのはお門違い。ざっくり軽快に鳴らして、なんか雰囲気いい。これでいい。

ひとつひとつのパートがリアルであるより、それぞれの音色はそこそこだけど、混ぜたらブレンド感がちょうどよい。とある世代の人なら、XG音源とGS音源の違いといったら通じるかもしれないね。

楽譜作成ソフト専用オーケストラ音源「NOTE PERFORMER(ノート・パフォーマー)」はそもそもの、その表現クオリティーの高さと、コストパフォーマンス、動作の軽快さとソフト容量がコンパクトとまさに牛丼に求められる「うまい、やすい、はやい」を、このグレイトニッチなスコア・アレンジ業界に持ち込んだ画期的製品。

これまでも「NOTE PERFORMER」は、スタジオ系ミュージシャンに人気の譜面作成ソフトSibelius(Avid社)ユーザーにとっては、以前からおなじみであり、その評価がすこぶる高かったのは、周りでかなり耳にしていたが、このたびバージョン3にアップグレードして、なんと、老舗譜面作成ソフト「Finale」(Make Music社)そして、近年、この二大楽譜作成ソフトの時代に突如参入した「Dorico」(Steinberg社)に対応したというので、興味津々、さっそくレビューしてみた。

ともあれ手元にあった、当方がFinaleで作成した、オーケストラと吹奏楽のスコアを「NOTE PERFORMER」で再生してみた音源をアップしておくので、参考にして欲しい。リアルさの追求というよりは、手軽なまとまり感のよさを感じてもらえるだろう。

FinaleScriptでNOTE PERFORMER用の再生スタイルを割り当てることで、本領発揮といったところである。細かな奏法や、スコア上の定義などは個別のスクリプトでも対応。

オーケストラスコアの再生サンプルとしては拙著『3つのケーススタディでよくわかるオーケストレーション技法』(リットーミュージック刊)よりカノン進行をオーケストラアレンジしたサンプル。ストリングだけではじまり、木管、金管、トゥッティサウンドに広がっていくさまが感じて頂けるであろう。

吹奏楽スコアの再生サンプルとしては以前、陸上自衛隊音楽隊の編曲講座で使用した、拙編曲アレンジの、唱歌『ふるさと』のカリビアン風編曲?いわゆるアソビのアレンジであり、アレ風なのだが、ここではオーケストラ以外の管楽合奏にも対応しているということを示したかった。

とにかく内蔵ソフト音源としては、とてもライトなので、すべてのNOTEパソコンにNOTE PERFORMER。そう、全く間違ってないかもしれない。


侘美秀俊(タクミヒデトシ)

北海道帯広市生まれ。武蔵野音楽大学卒業。作曲楽曲の提供は、陸上自衛隊音楽隊の委嘱作品、国民体育大会や音楽ホールのためのファンファーレ、劇場上映映画のオリジナルサウンドトラックから、演劇舞台のための音楽、こどものためのオペレッタまで多岐にわたる。現在、ローランドミュージックスクールのコンピュータミュージック指導者養成コース講師、トート音楽院渋谷校講師、表参道JBG音楽院講師、オンラインDTMスクールSleepfreaks講師。
最近のオーケストラ編曲提供としては、BEGIN × 京都市交響楽団『島人シンフォニー』、Game Symphony Japanなど。

著書に『マンガでわかる!音楽理論 1〜3』『できる ゼロからはじめるパソコン音楽制作超入門』『できる ゼロからはじめる楽譜&リズムの読み方 超入門』『3つのケーススタディでよくわかるオーケストレーション技法』『ProTools12 Software徹底操作ガイド』(以上リットーミュージック刊)がある。H-t studio、北海道作曲家協会会員

楽譜制作・編集の業界においては、幼児向け雑誌、歌謡曲の歌本から、合唱、吹奏楽、オーケストラ、現代音楽や商業音楽のレコーディング用スコア、パート譜作成まで、すべてのジャンルの楽譜制作に携わり、楽譜作成ソフトFinale、Sibelius、Dorico、スコアメーカーの指導も行う。


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